「夏の終わりに② 〜彼女の自己紹介〜」



   茜…2015年8月20日
                                              @麻布十番
                                          「アカネニクレル」

                                               LX100

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の日のBBQに初めてアントニオが出席した。何度誘っても頑なに拒み続けるアントニオが奥様を連れてきたのだ。もちろん僕ら全員が大歓迎をしたが、一番喜んだのはホストのブルーズ氏だったように思う。アントニオだけでもビックリするほど珍しいことだったけど、何よりも素敵な奥さんを伴っての出席が上機嫌にさせた。


シャイなアントニと同じくらいシャイな奥様は伏せ目がちにテーブルに着きややもするとすぐに給仕を始めようとするのを皆が止め、ブルーズ氏がワインを継ぎアントニオの普段の素晴らしい仕事をぶりを身振り手振りで伝え、アントニオも奥様もアパートの住民も皆笑いながらの宴は進んでいった。


つまりそこにいる誰もが歓迎しシャイな二人を向かい入れた。改めて一人一人自己紹介した。驚かされたのは202号室に住む4歳の女の子だった。


母親が東大医学部に在籍し、二人の子供と共にパスツールに留学している医師の娘さんでと、27歳の僕なんかより何十倍も流暢に自己紹介をしたのだ。面目丸つぶれだったが…大きな拍手と共に女の子の挨拶を皮切りに、暮れない晩夏のBBQは過ぎて行った。


宴も二時間も過ぎると会話はそれぞれ個別になり、フランス語学者と医学博士がフランスと日本の象牙の塔の話をしていたり、アントニオの奥さんとフランス語学者と同伴したもう一人のゲストが話をしたり。テントの中に留まる者、広い庭の好きな場所に好きな格好で好きな飲み物を持って各々話し込んでいた。


僕はと言えば、片言の稚拙なフランス語で強いイタリア訛りのアントニオと暮れゆく夏を惜しみながら、会話と会話の間に充分な時間を挟み庭の中段にある古い階段に座って一時間以上話をしていた。



誰が宣言することもなく宴は自然と解散になる…それはいつもの事だ。



一番初めにそっと席を離れるのは高齢のブルーズ氏。そしてパスツールの医師とその4歳と1歳のお嬢さん二人。
もう既に1歳の子はカートの中で寝ているけど。


(つづく)