街角で…2

                  ガラス越しの街
                        @麻布十番 移り変わる街角で…




 が閉まってちょうど一週間がたった朝、閉まっていたはずのシャッターが上がっていた。そして何事も無かったように腰の曲がったお婆さんが、商品を綺麗に並べていた。それを見た時、膝が抜けそうになった。「特に親しかった訳でも無いのに…」と内心笑ってしまったけれど。

 再開した”かどぱん”には大きな変化があった。


 店の奥の一段高くなった所にレジがある。一日の大半をお婆さんが過ごしている場所だ。ところがその席に一人の若いお嬢さんが座っているのだ。お婆さんの歳が分からないのと同じ様に、このお嬢さんも年齢がよく分からなかった。高校生と言えばそう見えるし、20歳代後半と言われれば…やはりそう見えるし。年齢が分からないのだ。まじまじと見るわけにもいかなかったが、「“かどぱん”=お婆さん」の図式が出来上がっている中で、「”かどぱん”にうら若き女性」…は無かったし、しかも綺麗な女性なのだから、どうしても見てしまう。

どこかで見たことがあるような気もしたが、最後まで分からなかった。


 しばらくして…突然あっ!と気付いた。
 ”かどぱん”のレジの上、天井に近い所にモノクロームの写真が一枚だけ飾ってある。若い背の高い男性と、小柄の綺麗な女性がこっちを見て立っているのだ。男性は真っ直ぐとこちらを見ていて、傍らの女性は静かに微笑んでいる。昭和の町並みの中の“かどぱん“の前で撮影されたものだ。コインパーキングになる前のガラス屋とクリーニング店が写っている…懐かしい写真だ。
 そして、あのレジに座っていたお嬢さんが、その中で静かに笑っているのだ。

 ”かどぱん”が再開してからお婆さんは、時々休むようになった。しかしお店は変わらず営業している。つまりお婆さんが休みの日は、あのお嬢さんが店番をするようになったのだ。

 お店が閉店している間、お婆さんは風邪をこじらせて入院を余儀なくさせられていたという。仕方なく店を閉めたがお婆さんはベッドの上でお店のことばかり心配していたらしい。親族は医師と相談の上、精神的には店に戻る方が良いだろうと、退院が検討されたが…高齢である事を考えると、今までのようは状態では許可を出す訳にはいかないと。医師から二つの条件が出された。一つは必ず休みを増やすこと、そしてもう一つは誰かに手伝って貰う事だった。そこで名乗りでたのが、あのお嬢さん。お婆さんのひ孫だったという訳なのだ。

 これを切っ掛けに、お婆さんの負担を少しでも軽減させようと、少しずつお婆さんの代理をするようにしたのだという。



 ドラマだったらここから話がドンドン広がるのかも知れないけど、なかなかそうはならない。相変わらずお婆さんは朝7時きっかりに店を開け、午後になるとお嬢さんと交代した。また土曜日も定休日になった。この話をしてくれたのは、戦前からある婦人服店の女主人で…詳しいこと詳しいこと。

 話に夢中になる女主人が名前を言いかけたのでストップをかけた。なんだか”かどぱん”のお婆さんは「かどぱんのお婆さん」だし”かどぱん”のお嬢さんは「かどぱんのお嬢さん」のままが良いなぁと。


 なんでも最近は近隣のオフィスから若い男性が買い物にくることが増えたらしい。
もちろん”かどぱんのお嬢さん“目当ての客だろう。ボクも”かどぱん”に行くのだが…目当ては密かに「お婆さん」だったりするのだけど。いつまでもお婆さんに店に立ち続けて欲しいなぁと思いながら…。


〈完〉

Comment

★naokoさんへ:
本当はもっと要約して短い文章にしたかったのですが…
そこは文才が無いので、どこをどう削ったら良いのか?
よく分からないのですぅ(^_^;)汗 
内田ユキオさんのような文章が書けたら…っていつも思うのですけどね。

(^_^)ゞ…そうそうこの写真は狙いましたエヘヘ  
幾つかあるパン屋さんの中から、日本的なニュアンスがある
モチーフがある所を探してここにしました。
naokoさんのウィンドーシリーズにリスペクトされました。

実際にこのお嬢さんが何歳なのか分かりませんが、
ちょっと夢がありますよね。なんだかnaokoさん…チャンスがある気がします。
ボクは…ちょっと厳しいなぁ。ナチョの子供の子供…って事ですものね。
小さな町の小さなパン屋さん。もしかしたらnaokoさんの住む町にもあるのかも知れませんよ。

お祝いの言葉、コメント、嬉しかったです…もちろんアレも(^o^)アハハ
有り難うございました。




  • 2012/07/07 21:46
  • ★naokoさんへ;ナチョパパ
  • URL
  • Edit
★マリコさんへ
はい。ドラマならお婆さんの名前やひ孫の名前…
そして店番をするに至ったサブストーリーなどがあるのだと思いますが、
そこは如何せん…単なる何処かの町のただのお店に過ぎないので、
細かくは分からないのです。
でもきっとこれからも、しばらくは変わらない光景が見られるのだと
思います(^_-)ウン


ですねぇ…あっという間に47才になってしまって、
その日が母の本当の四十九日なんて! 何とも不思議な縁なのですが…
2012年の自分の誕生日はきっと忘れないだろうと思います。
※もっとも四十九日ばかりが気になって自分の誕生日を忘れていたのですけどね。

空から「しっかりしなさいよ」って笑っている気もします(^o^)アハハ
コメント有り難うございました。







  • 2012/07/07 21:44
  • ★マリコさんへ:ナチョパパ
  • URL
  • Edit
★しょうさんへ:
世の中…そうそう事件になりそうなことも無く(^_^;)汗 
でもその積み重ねがどれだけ幸せな事か、ここ数年で実感しています。

コメント有り難うございました。
  • 2012/07/07 21:42
  • ★しょうさんへ:ナチョパパ
  • URL
  • Edit
★raouさんへ:
そう言って頂けると…ホッとします。
何か強力なオチがある時は最後にそこで弾ければ良いのですが…
実際には特に山場が無いまま進むのが日常ですものね。
書きながら…どうやって収拾を付けよう…と思ってしまいました。

はい。しっかり47才にもなってしまいました。
うーん新しいカメラって言われてもなんですが(^_^;)汗 
いつかは本当にLEICAが欲しいなぁって思っている昨今です。
宝の持ち腐れ…って気がしないでも無いのですけどね(^_^)ゞ

心遣いのコメント…いつも有り難うございます。





  • 2012/07/07 21:41
  • ★raouさんへ:ナチョパパ
  • URL
  • Edit
★kazahanaさんへ
連日、早いお越し有り難うございます。

そうなんです…結局そういう事になります。ある意味正しい代替わりって事でしょうか? 
オカルトでも何でも無いので…まさか生まれ変わりって事は無いと思いますが(^_-)ウン

有り難うございます…しっかり47才になりました
(この時点では明日には…って書く方がが正しいのですが)。
外観…つまり写真で写る部分はしっかり老いてきていますが、
中身がきちんと成長していないようで。

そろそろちゃんとした大人にならなといけない…って思っています(^o^)アハハ

コメント有り難うございました。




  • 2012/07/07 21:39
  • ★kazahanaさんへ:ナチョパパ
  • URL
  • Edit
あ~よかったぁ~おばあさんがお店に出られるようになって。。
それとこのお写真、
切り取られた麻布十番の風景、
フランス語?の中にお蕎麦屋さんが写ってる!
好きです(#^.^#)

ナチョパパさん、こんばんは~

お店を手伝ってくれているのはひ孫さんなのですね。
読みながらウチの場合に置き換えていました(^^ゞ
mikuがあと20年経って、、
となると私の母が100歳で、、
私もおばあさんの年になっていて(^^ゞ、、
娘は今の私より少し若いくらい、、
ん~可能ではあるのですね(^o^)

そうやって重ねながら読んでいたら、とても温かく嬉しくなりました。
ひ孫さんに助けられている「かどぱん」さんが新しい空気を放ちながら
この先もつづいていってほしいなぁ~と応援したい気持ちです。

雨の七夕ですね…
ナチョパパさんの新しい一年が素敵なものとなりますように。。

こんにちは
おばあさん お店に復帰できてよかった(´▽`)
ドキドキしました。

そして ナチョパパさん
お誕生日おめでとうございます(^-^)ノ∠※PAN!。.:*:・'゜☆。.:*:・'゜★゜'・:*
健康でよい1年が過ごせますように。

空の上から お母様が 
ナチョパパさんが元気でひとつ歳を重ねられた事を
喜んでいらっしゃいますね。
母は息子の成長がうれしいものなのです。
いくつになっても どこにいても(*^^*)
お婆さんに何事もなく、ホッとしちょります(笑)。
ええおはなしですね~
なかなか最近で聞くことのない心温まる話です。
そうそう、今日はナチョパパさんのお誕生日ですね
おめでとうございます
新しいカメラで新しい世界を切り取って私たちを楽しませてください。
ますます仕事も子育ても活発に活動していくことになるでしょうから、あまり無理しすぎないようにしてくださいね。
この一年がいい年でありますように。
看板娘の後釜は 看板娘さんだったのですね





明日はお誕生日ですね おめでとうございます 




  • 2012/07/06 23:18
  • 風花
  • URL
  • Edit
Comment Form
公開設定