輝春影憧

                     美しく…輝く影
                           @麻布十番




本当に大切な事…:
 一時期「春」を思わせるような日があったのが嘘のように一日中雨が降っていた。雨と冷たい風と低い雲は…より春を待つ心を強くしてしまう。

 
 今日クライアントとの打ち合わせで日本橋に行った。いつも銀座線で三越前まで行くのだが…その中でちょっと考えてしまった。

 東京ではほぼ一年中「就活」をしている学生を見ることが出来る。もちろん時期によってその増減あるけど、独特なスタイルなので「あー就職活動なんだな」と一目で分かる。昨今の経済状況を見れば、どの子にも心から頑張って欲しいし、「入口」とは言え、自分の将来の自分でつかみ取って欲しいと思うのだ。

 今日一人の就活中の女の子を見かけた。ご多分に漏れず、独特のスーツと低めのパンプス、黒いコートに、縦型薄トート(企業案内などの書類などを入れる)を持っていた。溜池山王駅(タメイケサンノウ)で一緒に乗車した形になった。
 冒頭に一年中見ることが出来る…と書いたけど、この時期は最も少ないので尚更目に付いたこともある。

 長椅子の一番端で向かい合うように座ったのだが、座ると同時に彼女はバッグからポーチを出しメイクを始めた。幾らオジサンのボクでも、今時そのくらいでは目くじらを立てる事もないし驚きもしない(苦笑) だって彼女がメイクをするようになった頃、周りの大人達が普通にそう言うことをしていただろうから。「電車の中でメイクをすること」は、今の若い子にとって普通のことなのだと思う。一切の羞恥心を感じないだろう。彼女(達)にとって電車はお化粧をして良い場所なのだ。

 
 問題はここからだった。ひと駅間ボクは読み掛けの本を開いていた。次の駅に着きふと顔を上げると…ボクに背を向けて(つまり彼女の正面に)歳を取った女性がリュックを背負って立っていたのだ。やがてドアが閉まり、老人はつり革に掴まって電車が動き出した。ボクは本を閉じて…席を譲った。

 老人はお礼を言って席に座わる為にこちらに身体を向けたのだが…とてもビックリした。

 ボクは就活中の彼女が、寝てしまっているのか、ボクがそうであったように本か何かを読んで気付かなかったのかと思ったのだが…なんとまだメイクをしていて、ビューラーでまつげを挟んでいたのだ。

 何度も言うけど、メイクに驚いたのでもなければ、ビューラーに驚いた訳でもない。目の前に明らかに老人がいて(オーバーじゃなく腰が軽く曲がっている)も、平気でメイクし続けている事に愕然としたのだ。もちろんそこはシルバーシートでもないし、優先席でもない。でも…なんと言うか、とても虚しかった。

 何しろ彼女は今、面接を受けて(その帰りかも知れないけど)、自分をしっかりと見つめて、人に評価されるという試練に向かい合っている真っ最中で、それはイコールで自分自身をきちんと見つめる時期にでもある。その為にナチュラルなメイクをして、シンプルなスーツを着て、低めのパンプスを履いて…マニュアルに従って就活をしている訳で。毎回「人間性を問われている」ような時間を過ごしているのだ。

 ボクが面接官なら…こんな無神経な子は採らない。面接官が乗っていることもまずないだろうけど、就活生は覚えていた方が良い。君たちの行動は色々な人が見ている。そしてどんなにマニュアル通りの格好をしていても、人の本質って思わぬ所で露見するのものだと言う事を。

 「見られてるからやる…じゃ困る」という人もいるだろう。確かに正論だ。でも「見られているかも知れない」という所にさえ気が回らない子、気遣いや心遣いが出来ない子が、仕事が出来るとは…ボクには思えないのだ。
 世の中はとても不公平で、二人の「同じ程度仕事が出来る子」なら、例え多少劣っていても気配りの出来る子を間違いなく選ぶ。

 中には「同じように仕事が出来るような子…なんて比較はあり得ない」という人もいるだろう。それは認めよう。だったら…こう言おう。君が優秀なら尚更詰まらないことで減点されるような行動は慎んだ方が良いよと。世の中は常に「つまらない」と思われることで人事が動いたりするものだから。